シアトルは米国の西海岸側の最北部に位置し、カナダとの国境に面している。
即ちカナダに WEST COAST CULTURE を運びこんだ重要な地だ。ここ WASHINGTON 州の州都で
中心街の構成は完全に縦型で、それは南北に伸びる道路に沿った形で形成されている。
それは MOUNT VERNON を越えてカナダのバンクーバー迄伸びる。複雑に込み入った湾岸は
バンクーバー島が地下変動の為に分離した時に出来上がった。その為に細く入り組んだ水路がうねった様に存在し、それは様々な港を創っている。それはまるで欧州の箱庭的な港町を見ている様で漁獲量も豊富だ。夏季の日没時間が夜８時ぐらいの日もあり、その時期の
AFTER 5 はとても有意義に過ごす事が出来る。
「君の来ているシャツはかっこいいなあ。俺、好きだよ君の格好」と独特の人懐っこい笑顔で GAY が
話しかけてきた。「もし良かったら俺の着ているシャツと交換しないかい？」と尋ねられた私は「御免、このシャツ俺も気にいってるんだよ、勘弁してくれよ」と断った。それでもはにかんだ様な笑顔でこの
RECORD SHOP の店員の STEVE は私を見つめている。何故だか私は GAY にもてる。理由は解らない。童顔だけどいつも見据えるような目つきで筋肉質な体の為なのだろうか。それとも人を喜ばせる雰囲気があるのだろうか？店の奥から
OWNER の KENNY がのっそりと現れた。KENNY は元軍人で現在も現役 SURFER でもある格好良い親父だ。みんなに慕われるだけの風格と
SURFER 特有の小麦色の引き締まった体が印象的だ。私は KENNY に助けを求める様に話かけた。
「ねえ KENNY トイレ貸してくれよ。朝から腹の具合が悪いんだよ。オレンジジュースを飲み過ぎたのかなあ」と言って私は奥のトイレに逃げ込んだ。KENNY
から昔聴いた事があるが兵役で日本に行った時も
休日はずっと波を捜していたらしい。そして彼は SURFER だから SAX BLOW の入った SURF & GARAGE
INST の FAN だと言っていた。成る程、確かに SURF INST や PARTY GARAGE INST に SAX
を導入した SOUND は画期的な試みだった。やはり ROCK & ROLL は若者の要求から生まれた音楽だ。それを体験出来た人達は幾つになっても
EXCITING な音楽を求める。SEATTLE に隣接する TACOMA は
元祖 GARAGE PUNK BAND の SONICS を輩出した町で SEATTLE と TACOMA をまたがる形で造られた空港は両方の名を取って
SEATAC と呼ばれている。ここは航空機産業の中心でもあり有名な
ボーイング社が工場を構えている。これが理由で SONICS の様な激しく荒削りな STYLE が確立された事は充分理解出来ると思う。工場で働く若者の
FRUSTRATION が爆発したのだ。こうなる迄には充分な段階をおいて確立された事実も見逃せない。
まず VENTURES の出現でこの地は INSTRUMENTAL BAND が脚光を浴びた。
VENTURES は例外的に LIBERTY RECORDS との契約で出世していったが、元々この地は JAZZ が
大きな需要だった。LOS ANGELES の BAND が LATINO 文化の影響で SAX を導入したのと違いSEATTLE
BAND は JAZZ FIELD からの発展を経て SAX & ORGAN の導入をした節がある。
彼らはそれを PARTY BAND として消化していった。それが SONICS の盟友の WAILERS であり、それに続いた
BAND だ。そしてそれらを中核において SEATTLE GARAGE SCENE は進化していった。
以前にも述べたがここは SAN FRANCISCO や NEW YORK と並んで同性愛者の人権をいち早く確立させたところだ。これが少なからずとも文化や音楽に影響を与えた。彼らが感覚的に
COOLNESS を感じて
いたのは JAZZ だった。彼らは抑圧される事を嫌い CREATIVE SOUND を創り出そうと懸命になった。
６０年代後期においての現れは表現方法を変えていこうとする BEAT POP や積極的な ELECTRONICS の導入だった。その後ＦＭの普及は大学生の
COMMUNE 化を進め現在の NEO ACO や GRUNGE に
進化した事は言う迄もない。これは中性的な表現方法の確立にも強く関わっている。
これは世相のバランスにも寄与する動きで、その中心が若年層であった事が興味深い。人が文化を造る意味では何処の国でも同じだがここ
SEATTLE では GAY CULTURE が見せる一風変わった文化と労働階級の生み出したマナーがバランス良く同居していた。
山間に面した STREET では性に対する解放区が設けられていて男性用下着店が派手に構えている。
そちらに近い RECORD SHOP が流行に敏感で、平野部に並ぶ RECORD SHOP はあくまでも記録の
探究に熱心である。これで街の形成からくる SEATTLE の現実が一目で解る。そして何処の国でも同じ様に大学所在地に並ぶ RECORD
SHOP はアカデミックでなければいけない。それは記録の探究こそが王道であるからだ。大学所在地の RECORD SHOP が学生からの買取だけでは探究者を満足させる事は出来ない。だから必然的に巨大ネットワークに足を突っ込む事になる。この原則は何処でも同じだ。
そしてそれが機能しないと優秀な MUSICIAN や ARTIST を輩出させる事は出来ない。
だから SEATTLE の中古 RECORD SHOP は文化探究者に RECORD を供給出来る様に努力した。
そしてそれが同地の知識人を刺激したのだ。ROCK & ROLL の普及と PARTY BAND の関係は密なものである。そしてそれは無数の
GARAGE BAND の輩出に起因している。SEATTLE MUSIC SCENE の状況が何故か反対側に位置する BOSTON
MUSIC SCENE に似ているのは興味深い。
西と東の違いはあれど地理的条件が似通っているからと思われる。大学生の自発的な動きにも共通点がある。音楽とは何時の時代でも若者が反応しないと運動体としての
MOVEMENT は形成されない。
出来れば ENTERTAINMENT と掛け離れた位置が好ましい。
これが独創的な自己表現の源となるからだ。PARTY BAND は模倣で始まり GARAGE BAND は
自己表現の手段である。闇雲に GUITAR をかき鳴らしたい衝動も GROUP で HARMONY を奏でようと
する欲望も自己表現の一部だ。だから GARAGE BAND の盛んな地域には独特の躍動感がある。
ここ SEATTLE において過去どれだけの若者が時代の扉を開こうと挑戦したのだろうか。
人口の比率からして大都市程では無いにしても、果敢なる挑戦者を多く輩出したのは事実だ。
西海岸でここまでヨーロピアンマナーを感じさせる土地も珍しく、それは FRENCH 文化の強いカナダと
隣接している為だと思われる。その為なのか拡散的な解放感を携える SOUND よりも内省的に心の中で消化しようとする SOUND
が何処よりも早くから注目されていた様に思える。特に米国の場合はベトナム戦争を分岐点に音楽状況も変化した。７０年代中期にエアーポケットに入った米国音楽産業は新たな
可能性を模索出来るに充分な時間を CREATOR 達に与えた。その意味で急速に SUB CULTURE を
成長させたのは紛れも無く FM RADIO の多様化だ。それが LOCAL HIT の音楽性を多様化させたのだ。話は変わるが依然として日本人は
COWBOY = TEXAS と思ってる節があるが、現在では TEXAS よりも北部の方が牛の放牧は盛んだ。放牧に適した牧草地帯が
TEXAS には無いのだ。実際化学調査をしても中西部の牧草よりも北部の方が高い栄養分を持っている事が解った。だから COWBOY
MUSIC = COUNTRY MUSIC は昔と比べて随分と北上しているのだ。しかしそれはあくまでも内陸部の牛街道の
出来事。海に面した地域ここ SEATTLE は昔から漁師が集まっている。
